2025年10月06日
肘内障は、肘が亜脱臼した状態を指します。大人に手を引っ張られたり、転倒した時に肘の靱帯(じんたい)から橈骨頭(とうこつとう)という外側の骨が亜脱臼し、痛がって腕を動かせなくなってしまうことをいいます。特に骨が未発達である6歳以下の子どもに多くみられ、小学校に入ってしまうと、ほぼ起こらなくなります。
肘内障の主な原因は、子どもが身長差のある母親に手を強く引かれたり、寝返りしたり、不自然に手をついてしまったりすることが多いです。原因がよく分からず気が付いたら肘内障が生じている場合もあります。肘の骨は輪状靱帯(りんじょうじんたい)という靱帯によって固定されていますが、子供のうちはその固定力が十分でないことが多いのです。このような状態で子どもの手が強く引っ張られたり捻られたりすると、未発達の骨が靱帯から外れかけてしまうため肘内障が起こると考えられています。
肘内障になると痛みのため腕を動かさなくなります。患者さんの多くが自分の症状をうまく説明できない小さな子供であるために、痛みで泣き出したり亜脱臼した側の腕を使わなくなったり、手を触られることを嫌がったりします。このようなそぶりを親が見て、子供の異変に気が付くこともあります。肘関節には、上腕骨、橈骨、尺骨という3本の骨があり、それぞれ肩関節や手関節にも関与しているため、負傷しているのは肘なのに肩や手首を痛がることもあります。
肘内障が疑われる場合、患部の触診を行い、腕を自力で上げられるか、どこが痛いのかなどを確認します。バンザイの姿勢をしようとしてもできない場合は、肘内障の可能性が大きいです。ただし肩や肘、手首の骨折や脱臼でも似たような症状がみられるため、必要があれば整形外科でX線検査に行って頂くこともあります。“親と歩いていて腕を引っ張られた”という肘内障の典型的な例で、肘に腫れがなくて骨折の疑いがない場合はX線検査を行う必要はありません。
肘の骨を正しい位置に戻す整復を、柔道整復師が行います。骨が正しい位置に戻れば痛みもなくなり、これまでどおり腕を使うことができます。しかし痛みの余韻が残っているために整復後もしばらく泣き止まないこともあります。
※参考文献
ウィキペディア